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スリープレス・ナイト(ネタバレ)/繋いだ手を離さぬように


男同士の友情と裏切り━フレンチノワール特有の骨組み(ライトな口当たりですが)に、父が子供との絆を取り戻すドラマが乗っかってるお話です。冒頭のコカイン強奪シーンが、夜じゃなのにやけに暗く感じたんですが、後でその理由が何となく分かったような気がしました。この捜査で彼はとんでもない状況に嵌ってしまうわけですから…。ナイトクラブ(この店のネオンサイン、空中に浮遊しているように見える)という閉じた場所だけで、ドラマが進行していく、限られた空間を刑事(トメル・シスレー)が行ったり来たりするだけになってしまう所を、イーストウッドと組むことが多いトム・スターンのカメラが救ってるんですよね。コントラストの強い映像から、表情も掴めないくらいのローキーまで、幅広い明度と映像処理で緊迫感のある画になっていて、既に深い溝が出来てしまっていた父と子の関係を横並びのクローズアップの切り返しで表す場面とか、意識を失った父の背中を息子視点で見せてる所とか印象深かったです。彼が見ていた筈の父とは違って、傷を負ったその姿は小さく感じたんじゃないでしょうか。。終盤、ナイトクラブの外(駐車場)はしっとりと雨に濡れた路面になってるのも、ノワール好きには嬉しい所。
アクションシーンはホントにアンテナがなくて、実はよく分かっていないのですが(笑)、厨房でのバトルは熱くなりました。身体をくるっと回転させて手錠をかける所、大の男を一瞬持ち上げる際のドシっとした身体の重み、段取りが多くて手間のかかるアクションをキチンと見せてるんだと思います。厨房で働く不法移民、クラブの客たちはアジア系からアフリカ系まで、まさに人種のるつぼといった感じ。マフィアのボスもトルコ系らしく、彼が最後に引き金を引いた理由は、移民に対する屈辱への意趣返しでしたし。。
マフィアから息子を取り戻すことに一度は成功したものの、立錐の余地もないくらい客でごった返しているクラブの階段で、ヴァンサンは息子の手を放してしまったんですよね。この一瞬がとても情感がこもっていて良いです。再度、子供を取り戻した彼は、執拗に彼を追い続ける汚職刑事に手錠を使わずに、自分と息子を繋ぐ絆として手錠を利用します。繋いだ子供の手を放してしまった親がその手を再びつかむまでの象徴として手錠が生きてくる。その他にケータイの使い方も面白かったです。ターゲットを嵌めるトラップから、動かすことのできない証拠品まで工夫の跡が窺えますね。
誘拐された息子が閉じ込められている部屋の、雨漏りのバケツに溜まっていく水が満杯になったら、砂時計のようにタイムアップを知らせる印になっちゃうんじゃないかと、直ぐにそう発想をしてしまう方なので(笑)、ココはドキドキしちゃいました。傷の手当てもままならないまま、奔走する父の白いシャツを染め上げる血と、息子の部屋の水が、サスペンスの緊迫感、残り少ない時間が無為に奪われていく焦りを炙り出します。ヴァンサンを演じたトメル・シスレーさん、決して若くはない男の、おへその周りにだけわずかに贅肉がついた緩みが渋くて良いです!パリッとした黒の上着と白シャツは、カッコ良くてとても似合ってますね。Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)で96というアベレージになっているのも納得です。中弛みになりそうなエピソード(プールバーのお姐さんとか)を刈り込んで、上映時間90分内のタイトな作品だったら最高でした。。

公式サイトhttp://www.sleeplessnight.jp/