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戦火の馬(ネタバレ)/奇跡の馬

■跳べ!ジョーイ
予告トレイラーだけで泣いてしまって、本編を観たら号泣しっぱなしになりそうだったので映画館での鑑賞を諦めた作品。スターチャンネルで観ました。お陰で頭が痛くなるくらい、心置きなく思いっきり泣けました(笑)。
イギリス・デヴォン州の貧しい小作農家にやって来た鹿毛のジョーイと青年アルバート・ナラコット(ジェレミー・アーヴァイン)が第一次世界大戦の西部戦線で奇跡の再会を果たすお話です。原作がマイケル・モーパーゴによる児童小説という事もあって、馬視点で(マンガみたいに馬が心情を吐露するナレーションがあるわけではないですが)人間並みに感情表現をし、演技する場面が多く、ココで冷めてしまう人はいるでしょうね。同じ戦馬で良きライバルだった青鹿毛のトップソーンが脚を痛めた為に、ドイツ軍の重い大砲を牽かされる役をひとまわり体の小さいジョーイが彼(←馬ですけど)を庇って自ら志願するという演技までやってます。がっしりとした農耕馬とは違ってサラブレッドは400〜600㎏余りの体重をあの細い脚で支える為に、脚にものすごく負荷がかかるんですよね。「ガラスの脚」という爆弾を抱えてるようなもの。そのお馬さんたちが泥濘の中、重量級の兵器を牽かされるのを見るだけで辛かった。血も涙もないドイツ将校は(←映画のお約束ですけど)、サラブレッドさえも消耗品扱いで、馬が疲労して倒れれば直ちに他の馬と交換しておしまい。馬も、兵士達も、戦場では交換可能な部品なんですね。
スタンリー・キューブリックの「突撃」同様、西部戦線での「塹壕」が登場します。第一次世界大戦での軍事的要害の最前線で、両陣営が張り巡らした有刺鉄線と塹壕の「地獄」をジョーイはひたすら「故郷」に向かって駈け抜ける。障害物が飛べない(臆病な所がある)お馬さんが、塹壕を跳び、戦車を踏み台にしてジャンプし、戦線離脱を図るんですが、有刺鉄線が体に食い込み、身動き取れなくなってしまい、これ以上前に進めなくなったジョーイを救ったのが、両陣営の中心だったのは面白かった。敵味方関係なく、唯、馬を救う為に兵士が集まってくるんです。今日の命の保証もない最前線でエアポケットのような「中間」的空間が出現する。戦場でのおとぎ話ですが、ベタだと分かっていても心を揺さぶられました。。第一次世界大戦は、化学兵器や重火器等、大量殺戮兵器が登場し、それまでの伝統的戦術を次々に塗り替えていった戦争です。機動力を生かした騎馬隊を、森に仕込まれていた機関銃が文字通り一掃してしまう、戦局の帰趨が物量の差で決まってしまうんですね。アルバートの父が従軍した第二次ボーア戦争では騎馬隊は花形だったでしょうけど…。
神懸かり的なヤヌス・カミンスキーの撮影は、どこを切り取っても額縁に入れて飾っておきたいくらいにパキンパキンに美しいです。もう、怖いほどきれい…。余りにきれいすぎて若干のつくりもの臭も…。石を組み上げただけのイギリスのお家の中は中世のまま時間が止まってしまったかのような空間で、ミレーやフェルメールといった絵画を思い出しました。荒れ地を耕す耕作機、戦場での兵器等を執拗に撮ってますけど、重さの表現なんでしょうかねぇ、それを牽かされるお馬さんにかかる重量を表現したかったんでしょうか。何をおいても、お馬さんが良いです!疾走するその姿の美しさよ!あぁ、眼福、眼福。ベネディクト・カンバーバッチがイギリス将校で出演していたのも嬉しかった、相変わらずの良い声ですね。