アンダー・ザ・スキン 種の捕食(ネタバレ)/一皮むけば…

ハニートラップの代償

スカーレット・ヨハンソンがボディ・ダブルではなく*1、本物のヌードを披露した作品、レンタルで観ました。
スコットランドの荒涼とした風景の中、白いトランジットバンを運転しながら、獲物となる男を誘い、沼のような異空間に沈める謎の女。沼に捉えられた男たちは、最後には皮一枚残して消えてしまうのですが、単純な食料確保というわけではなく、映画『マトリックス』で、機械たちが生存するために人間をプラントで栽培し生体エネルギーを得ていたと同じく、人(男性)を利用する他に得られない特殊なエネルギー=リビドーを抽出してるじゃなかろうかと思いました。彼女がやっている事って、所謂ハニートラップですよね。自らの肉体をエサに投げ出し、彼女の肉体に惹きつけられる男たちを一本釣りしていく、監視役のライダーさんとの二人三脚のチームプレイ。おっそろしく効率の悪いやり方ですが(笑)。


ひどい皮膚病を患った男性との接触から、人間性(感情)に目覚め、生体エネルギー回収装置として敷かれたレールから逸脱し、生身の肉体を持つ上で当然起きる様々な事(ケーキを食べ、あまりのまずさに吐き出す、性交渉に強烈な違和感を持つ)を体験、最後にはレイプされ、殺され、焼却されてしまう、人間のリビドーを回収していた人工生命体(多分)が、人間のリビドーによって破滅する寓意には、人は見た目に左右される「視る」奴隷であり、同時に無慈悲な暴君にもなれる存在なんだ!とは言っても、残酷でやりきれないなぁ。。彼女には自我の萌芽がありましたもの。


スカヨハの存在感のある肉体が凄いです!二の腕の付け根、むっちりと肉のついた下腹部、中でもローライズのジーンズをはいた彼女のおしりに目が釘付けになりました。決して身長が高いわけではないスカーレット・ヨハンソンですから、アングルによっては手足の短さが際立つんですよ。撮影時に体重も増やしたのか、スーパーモデルのようなスレンダーな肉体では表現できない、アンバランスな、それ故人間らしい「隙」のある肉体が、おそらく男たちにフレンドリーな印象を与えてしまうんでしょうね。完璧なモデル体型だったら、大抵の男性は萎縮しちゃうでしょうから…。


台詞はほとんどなく、シュールな画作りとアバンギャルドな音楽で独自の雰囲気を纏った作品です。お話はシンプルですので、この映像と音に酔える方なら嵌る事間違いなし。SF的主題を捌く手つきから、タルコフスキーに近いものも感じました。ミュージック・ビデオ出身のジョナサン・グレイザー監督はやはり映像派ですね。
男たちが沈められていく沼のような異空間から、無意識やエスといったもの、それらと不可分にあるリビドーとの関係性を見るのも面白そうなんですが、私が一番印象に残ったのは、スコットランドの風景群。中でも寒々しい海岸に取り残される赤ちゃんの泣き声は堪えました。水たまりでのお姫さま抱っこ。ベッドサイドのライトで、局所を確認するスカヨハの後ろ姿。空に拡散していく黒い煤等々、意識に突き刺さってくるような描写が秀逸。

*1:http://www.imdb.com/title/tt1441395/trivia?ref_=tt_trv_trvScarlett Johansson did the nude scenes herself without the use of a body double