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ノーカントリー(ネタバレ)/扉の向こうに潜むもの

■血だまりの歴史

公開時(2008年3月)のバージョンとDVDの違いが一か所あります。モスが殺されたエルパソのモーテルを、夜 、ベル保安官が一人で訪れるシークエンス。
ベルはモーテルの駐車場に車のライトをつけたまま、立ち入り禁止のテープが貼られたモーテルの部屋に近づく。公開バージョンではこのモーテルの扉を挟んで2人の男(シガーとベル)の切り返しがありました。モーテルの部屋の中にいるシガーの一人称視点で、吹っ飛ばされたシリンダーの穴から見た、緑色の光の縞模様に浮き上がるシャリフ帽を被ったベルらしき人物の画が一か所あったんですが、これがDVDではカットされました。ココ、ずいぶん悩んだんですけどね。この画があったから、ベルがモーテルを訪ねた同時刻にシガーも同じ部屋にいた可能性が生まれてしまうので。もし、同じ時刻に2人一緒にいたならどうしてベルは撃たれなかったのかとか、この部屋からシガーはどうやって出たの?等々、疑問が続出してしまう(笑)。
このシーンは極度の緊張状態にあったベルの心象なんですよね、シガーと遭遇する恐怖がもたらした幻影−モーテルのドアを開けた時、ベルは最初にモスが殺された際にできた血痕を見る。この血痕は後、引退した元保安官の叔父によって語られるアメリカの歴史の具象なんだと思います。モスの命を奪ったのは、メキシコ人でしたから。先住民の土地を奪い、その帰属をめぐってアメリカとメキシコが争ったのがテキサス。で、血塗られたアメリカの歴史(血だまり)の向こうにベルが見たものは、彼自身の「影」でした。モーテルの駐車場に止めた車のライトに浮かび上がる分身。シガーが扉の向こうに潜んでいるじゃないか、その気配を感じて極度の緊張状態にあったベルが見たものは、何のことはない彼の似姿だったんです。法と秩序の番人であるベルが自らの影に怯えていたんですよね。この場面、ベルの影が二重になってます。二つの影は、いったい何を何を意味するのでしょうか。。
まだいろんな所がモヤっとしてる作品なので、時間をかけてゆっくりと咀嚼したいと思ってます。個人ブログの気楽さは、好きな時に追加、変更できることですよね。この為にブログ始めたようなものですし…。