ダークナイトライジング(ネタバレ その二)/父の形象からの解放

公開時に感想はアップしてますが、ようやくDVDの映像特典を見終わり、モヤモヤしていた所が少しすっきりしましたので、もう一度、取り上げたいと思います。
まず、特典映像の中から面白いなぁと思った箇所を挙げていきますね。

ジョナサン・ノーラン(脚本)
バットマン・ビギンズ 幼いブルースの眼前で、両親が殺されるシーンの映像の後>
これは型破りで違法な方法で、悪と戦う事を決めた男の物語
彼の公正と正義の観念は、ある意味歪んでいるんだ
ブルースが難しい選択をさせられ、その選択の結果に取りつかれる点が面白い
ヒーローとしての人生は、様々な選択の結果の集大成だ

デヴィッド・S・ゴイヤー(原案、共同脚本)
バットスーツやバットマンとしての人格は、いわば“依存”の象徴なんだ
ブルースは怒りや暴力、バットスーツに取りつかれ、それらのために生きている
彼はバットマンになることで怒りを消化し、戦う相手がいる限り続けるつもりだっただろう
だが、街から犯罪が消えた今、目的を失ってしまった

ジョナサン・ノーラン(脚本)
<ダークナイト・ライジング 奈落の井戸の映像の後>
ヒーローにとっての真の試練
自分の恐怖とどう向き合うか
ギリギリまで追い込まれたらどうするか?

デヴィッド・S・ゴイヤー(原案、共同脚本)
<ダークナイト・ライジング 奈落の井戸の映像の後>
彼は生きると決めた
死への恐怖がブルースに生きる理由を与え、そして戦う理由になった

ジョーダン・ゴールドバーグ(共同制作)
観客がこの物語に共感できる理由は、ジャンルを超越しているからだ
これは生きる意志を取り戻した男の物語だ
ブルースは牢獄の壁を登って、ゴッサムへと戻っていく
彼にとって愛する街でもあり、遺産でもある

クリストファー・ノーラン(製作、原案、脚本、監督)
バットマン・ビギンズ 幼いブルースが家族と一緒にモノレールに乗っている映像の後>
ウェイン家とゴッサムは互いに大事な存在だ
第一作では、その点を強調して描いたし、その点は本作でも同じだ
父親が作ったモノレールは少ししか映らないが、ブルースにとっては両親との大切な思い出だ
だから彼は街を離れない

デヴィッド・S・ゴイヤー(原案、共同脚本)
ゴッサムは、彼が父から受け継いだ生ける遺産だ
父の為にも守りたいし、誇れる街にしたい
でも彼は学ばなければならない、ゴッサムや自分の怒りと決別する必要があることをね

クリスチャン・ベイルブルース・ウェイン/ダークナイト=バットマン
人生を支配する痛みにいつまで耐えられるか、いつから自滅の道を歩み始めるのか
本作の彼は不安定だからね

デヴィッド・S・ゴイヤー(原案、共同脚本)
どん底から抜け出して生きる方法はただひとつ
ブルースが悪の呪縛から逃れるには、怒りを捨て去ることだ
その為に、ゴッサムも自分自身も捨て”もう十分だ”と思えなければだめだ
”父さんも喜んでいる”と

■仮面の呪縛
映像特典を見て改めて思ったのは、この三部作もアメリカ映画の王道「父と息子」の物語の変奏だったんだなぁって事でしょうか。。
作品中に登場する核融合炉は、『バットマンビギンズ』に登場する「モノレール」なんですよね。平和的利用以外の目的はない、ゴッサム市民があまねくその利益を享受できる(筈)だったもの。それを「影の同盟」は大量殺戮兵器へと変えた。
バットマンビギンズ』の終盤で、ラーズ・アル・グールVSバットマンのパート、ゴードンパートのクロス・カッティングがありましたが(視覚的にもモノレールと、バットモービルの地上とに二分されてる)、同じくノーラン監督作『インセプション』も終盤に怒涛のクロス・カッティングが用意されてました。『インセプション』では夢が多層構造になっていて、各層をぶち抜く「キック」に映画的興奮があった上に、夢の中で死ねば虚無堕ちしてしまうルールによって、死ねない(殺せない)縛りがサスペンスを加速させるような所があったんです。本作、中性子爆弾を「時限爆弾化」してサスペンスに組み込んでいるんですよね。しかも、ウェインとセリーナカイルとは別にゴードンやルーシャス・フォックスも核爆発を阻止しようと動いている。3か所(ロビンのパートを加えれば4カ所になる)同時のクロスカッティングがあんまり生かされてない印象は、公開時と変わりませんでした。これは好みの問題もあるんでしょうけど…。ミランダが首をカクンと絶命する瞬間なんて、コントにしか見えませぬ(笑)。生きる為に“奈落”から這い上がった少女は、父の遺産を引き継ぐために自分の命を捨てる選択をした瞬間に、既に「落ちる(堕ちる)」ことを運命づけられてしまったんですよね。ミランダの最期は、トラックごと「落下」しましたから。「落ちる」「這い上がる」のモチーフはココでも徹底されてます。彼女がブルースの鏡像に間違いないと思います。
大都会のビル群を飛び回る昆虫型の飛行物「バット」。『ダーク・ナイト』の終盤、死んだハービー・デントをゴッサムの「象徴」とし、代わりに警官殺しの罪を被ったバットマンは犬に追われる身となりますが、この時「コンテナ置き場」を逃げていたんです。ビル群と同じ、俯瞰すればグリッド(格子)か幾何学模様に見える━ノーラン監督は建造物に興味があるようで、こういった無機質で直線的な建造物に、有機的で不安定なイコンなりイメージを取り合わせるのはホント、お好きなようですね、私も大好きです。。

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