ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1 第1、2話(ネタバレ)/私は無益を憎む
■ルールは ただ1つ“この屈辱を忘れるな”
8/6に「ハウス・オブ・カード」の動画をアップしたんですが、結構、ネタバレ検索でのアクセスが多くて、紹介だけで中身のない記事ではなんだか申し訳ないので、改めて記事に書くことにしました。とは言っても、映画とは違いドラマはまだ最後まで見終えていないので、どう書けばいいのかもよく分かっていないんですが…。
サウスカロライナ選出の民主党議員フランシス・アンダーウッド(ケヴィン・スペイシー )が、ギャレット・ウォーカーを大統領の椅子にまで登らせた功績から、当然「約束」されていた筈の国務大臣のポストを反故にされ、その裏切りに対する復讐を果たす為に、知的で狡猾、人を陰で操る薄汚いゲームを仕掛けていくポリティカル・サスペンス・ドラマで、とても面白かったです。原題の『HOUSE OF CARDS』はトランプ・カードの(で出来た)家、「砂上の楼閣」の意味でしょうか。。
映像派のフィンチャーらしく、TVドラマ(とは言ってもネット配信<ストリーミングメディア>として作られたんですが)とは思えないくらい豪華。ワシントンのポトマック河畔の夜景は、おそらくデジタルカメラ「RED」で撮影されたんじゃないでしょうか。アンダーウッド夫妻の私邸は、調度品を含めてとてもシックな色使い。映画とは若干照明が違うようで、あぁ、ココだけは映画で見たかったなぁと(笑)。
キャスティングもフィンチャーの過去作と所縁のある俳優さんが登場したりして、ココは素直に嬉しいですね。
アンダーウッドの妻クレアには『ドラゴン・タトゥーの女』のエリカ役ロビン・ライトが、ワシントン・ヘラルド紙の新人記者に、『ソーシャル・ネットワーク』、『ドラゴン・タトゥーの女』に出演したルーニー・マーラの姉ケイト・マーラが起用されています。頬骨の辺り、妹さんとよく似ていますよね。胸は似てませんが…あのVネックの谷間は凄いぞ!
まず、一番気になったのが、ドラマ内でひっきりなしにアンダーウッドのカメラ目線の「語り」が挿入されてる事。魑魅魍魎の徘徊する政界で仕掛ける「パワーゲーム」、その上っ面を撫でただけの見栄えの良い建前の裏に隠されたドロドロした本音の部分を、彼が一刀両断していく快感は小気味良いです。今後の展開次第でしょうが、彼の本音がさらに分裂していく混沌を密かに期待しています。
ケヴィン・スペイシーの一人称語り(ナレーション)だと、真っ先に思い出すのがサム・メンデス監督の『アメリカン・ビューティー』なんですが、『アメリカン~』はビリー・ワイルダー監督のフィルム・ノワールの傑作『サンセット大通り』に影響を受けている作品で、主人公のボイスオーバーに何かしら不吉なものを感じてしまうんですよ。これはドラマのプロローグ、車にはねられた犬を殺すシーンで、既に彼の手は血に染まってるわけで(手元は映ってませんが)、その時のセリフ“痛みには2種類ある。成長の為に必要なモノ。唯辛いだけの無益なもの。私は無益を憎む“と語られていた事が全てであって、この信条に忠実に行動するアンダーウッドを牽引し、さらなる深みへと引きずりこむのでしょう。
大統領補佐官がタフな女性で、それに輪をかけて強靭な精神の持ち主がアンダーウッドの妻クレア。政治家の妻として夫をプロデュースするだけではなく、彼女自身も第三世界の国々に清潔で安全な飲料水を届ける非営利団体「CWI」の代表であり、今後は水の利権をめぐる陰謀へと発展するのでしょうか、時代性を反映した脚本の目の付け所は良いですね。この夫婦関係は凄いわー。失意の夫を叱咤激励するやり方、中々勉強になりますよ、奥さま方は必見です。“ホントに酷い仕打ちね、あなた可哀想に、おー、よちよち”とは絶対に甘やかさないんです。欲望に足を取られ、浮ついた気持ちで、結果、首席補佐官の裏切りを見抜けなかったと、夫にキチンと認めさせた上で、その怒りを次の行動へと転化させる。こういう夫婦もあるんだなぁと…。首席補佐官と妻クレアが水面下で繰り広げる権謀術数が、今後の楽しみのひとつです。