映画

きっと、うまくいく(ネタバレ)/ニワトリは卵の行く末を知らない

■ミリがセンチになる混んでると聞いていたので、上映時間の一時間前には整理券ゲットしようと、いつもより早めに家を出たのに、窓口には既に長蛇の列。評判通りの、とても楽しい作品でした。上映中には何度も大笑いが起き、泣かせの場面ではあちこちからすす…

戦火の馬(ネタバレ)/奇跡の馬

■跳べ!ジョーイ 予告トレイラーだけで泣いてしまって、本編を観たら号泣しっぱなしになりそうだったので映画館での鑑賞を諦めた作品。スターチャンネルで観ました。お陰で頭が痛くなるくらい、心置きなく思いっきり泣けました(笑)。 イギリス・デヴォン州の…

ハッシュパピー バスタブ島の少女(ネタバレ)/世界の鼓動を聞く

■泥の止まり木―取り残された土地 アメリカのミシシッピー川下流域、南部デルタ地帯にある、ハッシュパピー(クヮヴェンジャネ・ウォレス)と父ウィンク(ドワイト・ヘンリー)が暮らす「バスタブ島」。この親子が住むお家が凄いことになってました!。森の中…

セデック・バレ(ネタバレ)/君がため 醸みし待酒 安の野に 独りや飲まむ 友無しにして

■高貴な野蛮人 1930年に起きた台湾原住民による抗日暴動事件「霧社事件」を『海角七号/君想う、国境の南』のウェイ・ダーションが、脚本、監督した歴史大作。上映時間4時間36分の完全版を観てきました。長っ!さすがに首がガチガチに…。台湾の山岳地帯に住む…

L.A. ギャング ストーリー(ネタバレ)/何に忠誠を誓うのか

■私が、彼の好みなの テンポよく、サクサクお話が進む作品です。その分、各キャラの掘り下げが甘く、ギャング映画としても、ノワールとしても物足りなかったです。東部(ニューヨーク出身)のギャング、ミッキー・コーエン(ショーン・ペン)が西部の街(ロサ…

アイアンマン3(ネタバレ)/バービー人形とのお別れ

あまり書くことがないので、以下、簡単な雑感です。 トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)が「おもちゃ」とさよならしておとなになるお話です。前作でのトニーは「アーマースーツ」=おもちゃが齎すパワーに依存していく危うさがあったんですが(一…

コズモポリス(ネタバレ)/白いリムジンの一日

■発砲スチロールの神を棄てた日 若くして成功した投資家エリック・パッカー(ロバート・パティンソン)の一日を描いた作品。この日、何故か床屋に行きたいと思ったエリックが、大統領の訪問や、有名ミュージシャンの葬儀、デモを繰り広げる大衆らで大渋滞した…

君と歩く世界(ネタバレ)/骨を砕いて血の味を知る

■語りかける肉体 クレイグ・ダヴィッドソンの同名のショートストーリー集「Rust and Bone」をジャック・オーディアール監督が映画化。ショーの最中に起きた事故によって膝から下を失ったシャチ調教師ステファニー(マリオン・コティヤール)と、社会の底辺で…

ラビット・ホール(ネタバレ)/あなたのポケットの石ころは、私には見えなくても、感じることは出来る

■虚構の力 不慮の事故で子供を失った夫婦の再生の物語。スターチャンネルで観ました。ピューリッツァー賞を受賞した『Rabbit Hole』を作者のデヴィッド・リンゼイ=アベアー自ら脚色しています。『オズ はじまりの戦い』でも脚本参加してるんですね。主人公…

マーサ、あるいはマーシー・メイ(ネタバレ)/どこにも居場所なんてない

■MARTHA MARCY MAY MARLENE マーサ(エリザベス・オルセン)が属していたカルト・コミューンのある山間の農場から脱出、2年間、音信不通だった姉ルーシー(サラ・ポールソン)の下に身を寄せるものの、マーサの言動が徐々に常軌を逸していく心理スリラーです。…

ザ・マスター(ネタバレ)/砂の女を抱いてまどろむ

■ニューヨーク行きの船に乗って 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」から5年(それにしても寡作ですよね)、ポール・トーマス・アンダーソンの新作です。とにかく、画の吸引力が半端ない。デパートで、マネキン替わりのモデルさんが商品の毛皮のコートを着て歩…

愛、アムール(ネタバレ)/水音が変わるまで

■Is anyone there 「ファニーゲーム」「ピアニスト」「隠された記憶」「白いリボン」等々、人間の内面に深く切り込んで、人目からは隠しておきたい暗部まで引きずりだしておきながら、しれっと涼しい顔をなさいますミヒャエル・ハネケの新作です。フィックス…

ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女(ネタバレ)/ガラテイアは心が通じぬブドウ

■『鳥』━ファリックな暴力性、『マーニー』━大理石の女、そして『めまい』へ サスペンスの神様ヒッチコックと、彼に見出された女優ティッピ・ヘドレンとの出会いと別れまでを描くテレビ映画。スターチャンネルで観ました。 どこかで聞いたようなお話だなぁっ…

ジャンゴ繋がれざる者(ネタバレ)/Freemanよ、馬に乗る者よ、我が王国(キングダム)にようこそ!

■I got a name急速な工業化により産業資本社会が成熟し、イギリスをはじめとする欧州の工業製品から自国の競争力を優位に保つために「保護関税政策」を望む北部(自由州)と、集約的労働力を必要とするプランテーション経済社会で、ヨーロッパに綿花等を輸出し…

世界にひとつのプレイブック(ネタバレ)/翼の折れた幸運のお守りを“兄弟愛の街”が包む

■サインに気付いて双極性障害のパット(ブラッドリー・クーパー)と、夫を事故で亡くし、その喪失感からセックス依存症になったティファニー(ジェニファー・ローレンス)。どう見ても普通じゃない二人が結ばれるまでのラブ・コメディです。法的処置によって、別…

ゼロ・ダーク・サーティ(ネタバレ)/死の陰の谷を行く時も

■コードネームはジェロニモ キャスリン・ビグロー監督作らしい、骨太で男前な作品です。前作『ハート・ロッカー』は、ビグロー姐さんの趣味全開の(笑)、男だらけのホモ・ソーシャルな世界(実際の軍隊には多くの女性兵がいる筈です)でしたが、今回は女性…

東ベルリンから来た女(ネタバレ)/バルト海から吹く風

■海は嫌いなの ベルリンの壁崩壊前の旧東ドイツの田舎町が舞台。監視社会の恐ろしさがサスペンスのフックとなって、とても緊張感のあるドラマで引き込まれました。ベルリンの大病院から田舎町の小さな病院に左遷された女医バルバラ(ニーナ・ホス)は、秘密…

ライフ・オブ・パイ(ネタバレ)/神の愛は森に隠れてる

※完全ネタバレしてます。未見の方はスルーしてください。 予告編からは想像もつかなかった作品。頭に残ってしまったのが、自己とは他者とは何かといった哲学めいた事ばかりです。哲学、苦手なんですけど(笑)書かないとモヤモヤしたままなので、思い切って…

少年と自転車(ネタバレ)/あの頃、自転車で行ける場所が世界のすべてだった

■アダージョは傷ついた少年に寄り添う 公開中は見逃してしまってようやくDVDを観ました。本作、ダルデンヌ兄弟作品の中ではとっても珍しい事に劇判が結構使われているんですね(使用されたのは、ベートーヴェン作ピアノ協奏曲第五番「皇帝」第二楽章アダージ…

ホビット思いがけない冒険(ネタバレその二)/To dungeons deep and caverns old  

IMAXのハイ・フレーム・レート(HFR 3D)吹き替え版で2回目、観てきました!良かったー。ちらつきのない、滑らかな映像だと聞いてたんですが、まるで映画の中に放り込まれる感じです。IMAXなので画面はあまり暗くならないし、あの鬱陶しいメガネさえなければ…

ダークナイトライジング(ネタバレ その二)/父の形象からの解放

公開時に感想はアップしてますが、ようやくDVDの映像特典を見終わり、モヤモヤしていた所が少しすっきりしましたので、もう一度、取り上げたいと思います。 まず、特典映像の中から面白いなぁと思った箇所を挙げていきますね。 ジョナサン・ノーラン(脚本)…

最初の人間(ネタバレ)/作家の義務とは、歴史を作る側ではなく、歴史を生きる側に身を置くこと

■起源への旅 1960年、自動車事故で急逝したアルベール・カミュ未完の自伝的小説『最初の人間』の映画化作品です。著名な作家ジャック・コルムリ(ジャック・ガンブラン)の父親の墓参りから始まる本作。地中海の彼方にある祖国フランスの為に、一人息子が生…

ホビット 思いがけない冒険(ネタバレ)/Far over the Misty Mountains cold━彷徨える民、望郷の想い

■七つの指輪は、岩の館のドワーフの君に 映画『LOTR』3部作の公開よりずっと前にJ・R・R・トールキンの小説『指輪物語』『シルマリルの物語』を読んでましたが、『ホビットの冒険』は児童文学という事もあって未読のままでした。本作、『指輪物語』及び『LOT…

もうひとりのシェイクスピア(ネタバレ)/“奈落”から甦る言葉

the Virgin Queen(処女王)とも呼ばれ、生涯、独身を通したエリザベス一世の統治時代。スコットランド王ジェームス6世を後継者にと画策する、ウィリアム・ロバートセシル親子の宰相派と、テューダー朝の血を引くエリザベスの隠し子を擁立しようとするオック…

ぼんち(ネタバレ)/気根性のあるぼんちになってや、ぼんぼんで終ったらあかんで

少し前に日本映画専門チャンネルで観ました。これは文句なしに面白かったです。山崎豊子のベストセラーの映画化で、時代劇として様式化されたコードに忠実に描かれる封建社会ではなく、昭和初期、男女の価値観や家族制度も大きく様変わりをした激動の時代に…

ラブ・アクチュアリー/love actually is all around

クリスマスシーズンになると観たくなる本作。 ローラ・リニーのパートが良いですね。お話は分かっているのに、必ずここでグシュっとなります。後、そうですね、エマ・トンプソンが夫から贈られたプレゼントの件。子供たちを心配させないように、こっそり泣い…

砂漠でサーモン・フィッシング(ネタバレ)/錦鯉の池から養殖サケが巣立つ

■fish(魚) はfaith(信心)に通ず イエメンで鮭釣りを実現させる、前代未聞の国家プロジェクトが動き出すまでのイギリス編が政治風刺が効いていて良いですね。首相広報官パトリシア・マクスウェル(クリスティン・スコット・トーマス)の頭の中は選挙=有…

スカイフォール(ネタバレ)/さようなら、私を愛したスパイたち

一日の映画の日に観ました。シネコンの最大箱がお客さんで一杯になった状態で映画を観るのは何年ぶりでしょうか。。 今回のボンドガールは「M」なんだという情報、事前に目にしていたんですが、なるほど納得です。上海編で、超高層ビルの反対側の部屋に登場…

チキンとプラム(ネタバレ)/ため息の数だけ、命が輝く

■チキンのプラム煮にも、ため息は宿る ナセル・アリ(マチュー・アマルリック)が死に、母の墓石の横に埋葬されるまでの8日間を描いた作品です。冒頭で、雪を抱いたアルボルズ山脈らしき山が切り絵風の絵に収まっていたり、美しいアーチのあるバザールが登場…

カラスの親指/子を思う親の想いは、風船と共に

原作を読んでいた夫が観たがっていたので、観てきました。彼が、邦画を選ぶこと自体珍しいんですけど…。20世紀FOXのローカルプロダクション作品なんですね。 ストーリー上、大どんでん返しがありますので、ネタバレになりそうな細部には触れません。以下、簡…